まだ妻が25歳くらいのころ、群馬県の混浴にいった。
長寿館という、ひなびた内湯の混浴。
男が多いとは聞いていたが、まぁ、大丈夫だろうと思い、深く考えなかった。
運が良ければ、他の女の子とも混浴できる…なんて考えが甘かった。
曜日は日曜。泊まるのも大変なので日帰り入浴。
今から考えると、日曜は最高に混んでいたようだった。
その混浴に行ってみると…。
何と、いたのは、全員男だった。
これは奇跡的に、ほとんど人がいない瞬間を撮ってると思うんだが。
ここに、所狭しと!
フルに男がいた。もう全員男。
湯船一つに、2~3人ほどの男。全部で30人くらいか。
引いた。
自分も混浴に来てるくせに、ちょっと引いた。
慌てて、まだ入り口にいた妻に声をかける。
「何か男しかいないけど…大丈夫?」
妻は言った。
「うん…。せっかく来たんだし、もったいないから…。
あなたと一緒なら、大丈夫よ」
そんな感じのセリフだった。
妻は結構、あっけらかんとした性格で、人の悪意や、性的な視線などを、あまり気にとめない。いい意味で、鈍い女である。あくまで、いい意味で。
心配ではありつつも、とにかく中に見送った。
男なので、自分は脱ぐのは早い。
とにかく大急ぎで入って、そのうち一つの湯船に入った。
すると…。異様な感じだった。他の男が、全員、女湯の入り口に注目してるのだ。
さらに…。
女湯の脱衣所の上半分が、まる見えだった。
妻はまったく気づいていないのか、そんなに気にしていないのか…。
男たちの前で、服を脱ぎ、ブラを外し…。
胸が、まる見えになった。
男たちはニヤニヤして、それを見ていた。
目の前で見られていることに気づきつつも、何も言えない。
妻はそのまま、ハンドタオルを前に当てて、中に入ってきた。
その瞬間、妻も「うわっ…」と思ったようだった。
何しろ、すべての男が、妻に注目しているのだ。
その中で自分を見つけ、妻はここまで歩いてくる。
ハンドタオル一枚だから、もちろん後ろはまる見えだ。
「あなた…」
そんなことを言いながら、僕の湯船に近づいてきた。
そのときだった。
僕の方に近寄りながら、一段、下りる。その次の瞬間。
「あっ!」
妻の、アソコがまる見えになっていた。
自分でも最初、何が起こったのか分からなかった。
実はこの温泉、行ったことがある方は分かるかもしれないが、湿度が高いため、床が滑る。
そして…。
妻は、転んだのだ。ツルッと。
段を下りながら、滑って転んだら、どんな体勢になるか。言うまでもなく、「尻餅」をつく。すると当然、足は開く。
妻は「M字開脚」になっていた。いや、自分でもこう描きながらネタに思えるのだが、本当にそういう体勢だったのだ。ネタだったらどんなに良かったか。
そして、オッパイはもちろん、陰部もまる見えになっていた。パックリと。
赤い部分が見えていた。
どんなサービスだと。
言うまでもなく、視聴率は100%だった。
おそらく、正常位で妻と交わった男しか見ることのできない体勢を。体を。
ただこの瞬間、たまたまこの温泉に来ただけの男たち全員が見たのだ。
状況を整理し受け入れるまで、数秒かかった気がした。
「あ、あはは…」
妻は照れ笑いをする。
自分はツバを飲み込みつつ「な、なにやってんだよ…」と言うのが精一杯だった。
妻はタオルで何とか体を隠して、湯船に入ろうとする。
そのとき、男の一人が「ここはタオル厳禁だよ。そこに入れて」と言った。
確かに。タオル禁止と、ネットでかいてあった気がした。
しかし、実際にそこまで厳密だとは思っていなかった。
「そ、そうですか…?」
妻はあわてて従う。
人間、転んだあととか、慌てているときは、ついそれに従ってしまうようだ。
タナにタオルを入れ…。
全裸を全員に晒しながら、湯船に入ってきた。
しばらくは落ち着いていたかと思ったが…。
そのとき。ふと横を見ると…。
太った男が、妻をガン見しながら、手を前後に動かしていた。
男 男 男
――――――棒
男 妻 自分
↑こいつ
妻はあまり気にしていないのか気づいていないのか…。
ただ自分の方を見て入浴している。
というか、その場の男全員が妻に注目しているのだ。
かえって妻は、目を合わせないように、男たちから目をそらしてるようだった。
なおさら気づくわけがない。
隣の男は、オナってる。間違いなく。
全裸を見て興奮したのだろう…。さらにお湯は透明だ。
中に入っても、すべて見ることができる。
特に乳首なんか、まる見えだ。
自分からも見えているのだから、男からも当然見えているだろう。
そして自分の目の前で、明らかに妻の裸を見ながら、自慰をしていたのだ。
先ほどのまる見えの陰部を目に焼き付けたまま、この裸を見ながら…。
今から思えば注意すべきとも思うが、その異様な雰囲気の中、さすがに言うことはできなかった。痴漢にあいつつも声が出せない女の子の気持ちに近いというか…。場の空気を壊せないというか。
他の男たちも、注意はしないようだった。
せいぜい「にらむ」のが精一杯だった。
しかし男は、自分の視線に気づいても、ニヤニヤするだけだった。
生で妻の裸を見られ、さらに自慰をされているのに、何もできない。
そのうち、隣の男は妻の胸を見たまま、ピクッと動いて、前後の動きを止めた。
明らかに、射精しているようだった。
しかも、妻の体に向けて。
妻はまったく気づいていない。
妻の体を動かそうと思ったが、その場でとっさにできる行動ではなかった。
そのあと、妻は「熱い…」と言いつつ、湯船から手を出して、顔を拭いたりしていた。
薄まっているとはいえ、精子をぬりたくっているのと同じではないかと思った。
そして妻はそのまま、また全員の視線をすべて受けながら、真っ裸で、湯船から出て…。
ハンドタオルで前を隠し、脱衣所に戻っていった。
最後の最後まで、尻を見られながら。
そのあと。
帰りの車の中で、妻に「どうだった?」と確認した。
すると「隣の人と、当たってた」と。
意味が分からなかった。
よくよく聞くと、隣の男と、何度も体が当たっていたらしい。
自分は気づかなかったが…。
妻に言わせると「そんなに広くないから、しょうがないのかと思った」と。
その男は、偶然を装いながら、妻の裸を触りながら、オナっていたのだ…。
そして自分は、それを目の前で見ながら、何もできなかったのだ。
あまりに屈辱的だった。
長寿館のはずなのに、自分の寿命が数年縮まった気がした。