あれは22歳のある晴れた春の日の事だった。
新入社員の俺は部署の新歓飲み会に参加した。
2次会のカラオケを終えて、
30代前半の先輩社員に風俗に連れて行ってもらった。
初めての風俗。
これが社会か!と興奮しきり。
軽く緊張しつつ、カタログを開く。
高校の時好きだった子に似た子をセレクト。
待合室にやってきた“愛ちゃん(仮名)”は、
好きだったあの子に本当に似ている。
個室に入り、シャワーで仕事と飲み会の汗を流す。
シャワー室でのフェラで発射。
ベッドの上で絡み合い、手コキに前立腺マッサージ。
来て良かった~と大満足でいると、おもむろにゴムを突き付けてきた。
噂に聞いた『基盤(本番の隠語)』と思ったら、
「◯◯君だよね・・・本番するから内緒にしてください」
と土下座された。
(いや、俺はそんなつもりじゃ・・・。)
無言でゴムを装着する愛ちゃん。
意志とは裏腹に俺の性器は怒張している。
そこに腰を沈めていく愛ちゃん。
ベッドの軋む音。
(ばれたら怒られるんじゃないか?)
意外にも冷静な俺。
揺れるおっぱい。
俺の腹辺りに視線を落とし浅い呼吸をする愛ちゃん。
気まずい・・・が、しかし押し寄せる快感。
本日2発目。
ゴムを抜き取り、お掃除フェラをしてくれる。
目が合い、引きつる笑顔の愛ちゃん。
居たたまれずに口を開く。
「△△さんだとは、気付かなかったから・・・ごめん」
言葉を選ぶ。
「何で?」と聞きたいが躊躇う。
「ううん。
もう辞めるから」
こういう時の女って人の話全然聞かないんだよなあ。
「絶対言わないよ」
淡々と処理を済ませていく愛ちゃん。
その後は客と風俗嬢としての定型文のやりとり。
個室を出ると先輩社員は既に事を終えていた。
会計も済んでいるようだ。
店を後にする。
「いまいちだった?」
浮かない顔の俺を見て心配気に言ってくれる。
「いえ、良かったですよ」
どう返していいのかわからない。
後日、その風俗店のサイトを見た。
愛ちゃんの退店イベントが催されているようだ。
右手で顔を隠し、パンツ一丁で女座りの愛ちゃんはトップ2の人気嬢で、
得意技はフェラ。
性感帯は全身。
俺が大学に入って初めての彼女ができる少し前まで、一番好きな人だった。
あれからもうじき1年半。
俺は一度も風俗に行っていない。
この一件以来、風俗はトラウマで、行ってもどうせ勃たないと思えた。
風俗の文字を見るだけで気持ちが萎える。
上手いこと派遣社員とセフレになれたから今はどうでもいいや。
あの時口に出せなかった「何で?」も、今はどうでもいい。
△△さんは昔の好きな人として思い出で終われば良かった。
愛ちゃんには出会いたく無かった。
意志に反していても、気持ちは無くとも、
なまじ肌に触れてしまったばかりに引きずるのだ。
セフレのおっぱいは△△さんによく似ている。