奥飛騨温泉郷の中でも、最も奥まった高台にある古い宿。
 民宿に毛が生えた程度の、こじんまりとした、しかし、落ち着いた風情のある宿だ。
 年に1度、仕事にも、家族にも縛られない、バイクのひとり旅に、持って来いの宿だ。
 早朝からのツーリングの心地よい疲れで、温泉にも入らず、食事のあとすぐに寝入ってしまっていた。
 気がついたのは既に0時すぎだが、露天風呂は24時間いつでも入れるとのこと、せっかくの温泉を楽しもうと、風呂場に向かった。
 ここの露天は確か混浴のはずだが…スケベ心が全然なかったと言えば、嘘になる。
 しかし、まさかこんな時間、誰もいないだろうとも思っていた。
内風呂でかかり湯をしてから露天風呂へ。
 片足をザブンと湯船に入れたところで、すぐ近くに先客がいるのに気がついた。
 跳ねた湯を浴びせてしまったか。
 「あ、失礼!気がつかなくって…」で、絶句。
 なんと、若い…とは言っても、30才は越えているだろうか…あか抜けた、美しい顔立ちの女性だ。
 「いいえ、大丈夫ですよ。お気になさらないで。」
 まったく、落ち着いたものだ。
 こちらは、湯船に入るのに、前にあてていたタオルを外したところだったこともあり、大いに慌てた。
 だって、高さはちょうど相手の頭あたり、目の前1mたらずのところだ。
 何がって…タオルを外して剥き出しのナニが、だよ。
 慌ててバランスを崩し、湯船の中にタオルを落として…騒々しいこと夥しい。
 女性は、軽く握った手の甲を口にあて、肩を震わせて笑いをこらえて…いや、こらえきれずに笑っている。
 またまた慌てて手で前を隠して、タオルを拾い上げ、「ごめんなさい。失礼。」と、風呂から出ようとした。
 この状況で、見知らぬ女性と混浴できるほどの度胸は持ち合わせてない。
 「あら、待ってください。いいんですよ。」
 「あ、いや、でも…」
 「お客様に出ていかれたら、困ります。だいいち、ここ、混浴のお風呂ですし。」
 「あ?あなた、こちらの?」
 「はい。客室係なんですよ。お客様を追い出したりしたら、叱られます。」
 「はあ、でも、なんか…本当にいいのかな?」
 スケベ心が顔に出ないように…
 「ご迷惑でなければ、ご一緒させてくださいね。」
 「め、迷惑だなんて、と、と、とんでもない。もちろんですっ!」
 何が「もちろん」なんだか。
 結局、その女性から少し離れたところに行き、湯に浸かった。
 とはいえ、それほど大きな風呂場でもないし、やはり気になる。
 チラチラとそちらを見てしまう。
 彼女にしても、いくらかは気にはなるようで、時々、視線があう。
 何度目か、目があった時、彼女は少し微笑んだ。
 「もう、しょうがないなあ」という感じだろうか。
 そして、驚いたことに、湯船なかでスッと立ち上がると、こちらに歩いてきた。
 結構深い…とはいうものの、湯は彼女の腰まではない。
 歩みにあわせて、叢の黒い影が、ちょうど水面のあたりでゆらゆら揺れる。
 真っ直ぐにこちらを向いた乳房。
 大きくはないが、張りや形は申し分ない。
 褐色に色づいた乳首も、掌を添えてはいるものの、完全に隠れてはいない。
 スッキリとした、小柄だが姿の良い女性だ。
 しばらく見とれていたが、彼女の視線にたじろいで、慌てて目を逸らせた。
 隣まで来ると、腕が触れあいそうなほど近くに、体を沈めた。
 小さめの乳首はちょうど水面の高さで、乳暈の半分はお湯の上に見えている。
 当然ながら、この時点で勃起してしまっているが、幸い、こちらはお湯のなかで、バレることはないだろう。
 自分の心臓の音が聞こえそうなほど、ドキドキしている。
 あらぬ方に目を向け、知らん顔をするのが精一杯だった。
 そんなことは知らぬげに、話しかけてくる。
 「お客さん、お着きになったとき、見てました。ツーリングって言うんですか?大きなバイクで来られてるんですね。」
 「ええ。いい年をして、道楽ですよ。お恥ずかしい。」
 「ううん。バイク、ステキです。ナンバー見ましたけど、ずいぶんと遠くからなんですね。」
 しばらく話した後、しばし沈黙。
 相変わらず、彼女からは目をそらせて。
「うふ。…紳士なんですね。」
 「そんな…からかわないでください。」
 「ごめんなさい。からかってる訳じゃないんですよ。」
 「ははは。普通の、人並みにスケベなオヤジですからね。今だって、ちゃんと横目で見るべきところは見てるんですよ。とてもキレイで、魅力的で。」
 「…」
 今更ながら、恥ずかしそうに乳を隠す。
 「あの…いつもこんな時間に、こうやってココに来るんですか?」
 「ええ、いつもってわけではないです。泊まり番の時に、それも、ごくたまに。」
 「だったら僕はすごくラッキーだったんだ?」
 「まあっ。」
 「ふう。さて…と。のぼせてきましたよ。ちょっとあがって、風にあたろうかな。ちょっと向こうを向いててもらえませんか?」
 「ダメです。私のこと、見たんでしょ?今度はあなたの番!」
 「あ…いや、それはマズイ。」
 「?」
 「だって、あんなの見せられて。勃っちまってるんですから。」
 「まあ!!!」
 「ほんと、かんべんしてください。」
 「はいはい。これでいいですか?」
 笑いながら両手で顔を覆って、体ごと少し向こう向きになった。
湯船の脇に、あづま屋風の屋寝付きの板敷きが設えられている。
 そこに仰向けに寝転ぶ。
 火照った体に夜風が心地よい。
 さすがに腰にはタオルをかけたが、モノがいきり立った状態で、俗にいう「テント」なのは、如何ともしがたい。
 宥めるため…というわけでもないのだが、タオルの中に手を突っ込み、怒張を握りしめると、全身に快感が広がった。
 ゆっくりと、上下にしごく。
 そうして、考えた…いや、妄想したというべきか。
(並んで湯に浸かって、裸を盗み見るのもいいが…ちょっと息をつかせてくれ。)
 (それほどアバズレにも見えないが、なんであんなに平気なんだ?)
 (いつもやってて慣れてるのか。)
 (まあ、それはいいが、この後、どうなるんだ?)
 (彼女、どういうつもりなんだ?)
 (いや、俺はどうしたいんだ?)
ペタペタという濡れた足音に気づいて目を開けると、彼女がいた。
 寝転んだ俺の足元辺り。
 胸から腰にかけてタオルを垂らしているが、向こう向きに立っているので、お尻は丸見えだ。
 「私もここ、いいですか?」
 言いながら、返事を待つでもなく、その場にお尻をついて座った。
 胸のタオルがハラリと落ちたが、ここからでは、乳首までは見えない。
 見えないが、それがまた、いい。
 「ああ、いいきもち!」
 言いながら、腰のタオルに目を落とす。
 逸物をしごく手にあわせて、タオルも動いている。
 「そうしてると、気持ちいいです?」
 「あ、ああ。申し訳ない。見苦しいな。」
 「いえ。いいんです。なんだか、ぜんぜん嫌らしくなくて。変ですね。」
 「そう、いや、変なのは僕です。」
 彼女は、突然、タオルを払い除けると、俺の手を外させた。
 そして次に。
 自分の手とは違う、優しく、柔らかいものに包まれた。
 彼女の手が怒張したそれを握り、静かに上下する。
 ゆっくりと、強く、弱く。
 全身に快感が広がる。
 体の向きが変わったため、彼女の体を真横から眺めることになった。
 愛嬌のある鼻に、少し緊張ぎみに力が入って、開き気味の口元。
 尖った顎から、喉、鎖骨の辺りまでのスッキリしたライン。
 そして。
 小ぶりながら、ふっくらとした丸みのある乳房と、その先端の小さな乳首。
 大人の色香を発散する、妖しい美しさだ。
 手を伸ばすと、悪戯っぽく微笑みながら、こちらに体をずらせてきた。
 こちらも体を起こし、右手で乳房を包む。
 「あ…」
 掌に、硬く尖った乳首の突起。
 その突起を転がすように、乳房全体を揉む。
 「…恥ずかしい。ちくび、よわいんです。」
 怒張を握った手に力が入る。
 指先で乳首を弾き、つまむ。
 彼女の手の動きが速くなり、快感が増す。
 「このままで、いいですか?」
 「そのまま…続けて…」
 「はい。いいですよ。逝って…」
 さらに強く、速く…
 どく、どく、どく…
 右手で搾り出しながら、尖端を左の掌でなで回す。
 彼女の手が、精液にまみれる。
「すごい。たくさん。」
 「あぁ。恥ずかしいな。」
 「ううん。おじさま、かわいいです。」
 「また、からかう。」
 「うふ、ごめんなさい。」
翌朝。
 ツーリングの日はいつも朝が早い。
 出発の準備を整えて、6時過ぎに食堂におりた。
 給仕に来てくれたのは、昨夜の彼女だった。
 早発ちのため朝食は不要と申し込んだのだが、早くても準備してくれるという宿の好意に甘えた格好で、それが、彼女の泊まり番に繋がったようだ。
 6時半すぎ、出発。
 見送りは彼女ひとりだ。
 バイクに跨がる僕に、手を差しのべる。
 もう一度グラブを外し、軽く手を握る。
 優しい、柔らかな手。
 「行ってらっしゃいませ。また、来てくださいね。」 



